『日本改造計画』~著者:小沢一郎 1993(平成5)年5月20日 第1刷発行
まえがき
米国アリゾナ州北部に有名なグランド・キャニオンがある。コロラド川がコロラド高原を刻んで作った大渓谷で、深さは1,200mである。日本で最も高いビル、横浜のランドマークタワーは、70階、296mだから、その4つ分の高さに相当する。
ある日、私は現地へ行ってみた、そして、驚いた。
国立公園の観光地で、多く人々が訪れるにもかかわらず、転落を防ぐ柵が見当たらないのである。しかも、大きく突き出た岩の先端には若い男女がすわり、戯れている。私はあたりを見回してみた。注意をうながす人が居ないばかりか、立札すら見当たらない。日本だったら柵が施され、「立入厳禁」などの立札があちこちに立てられているはずであり、公園の管理者がとんできて注意するだろう。
私は想像してみた。
もし日本の観光地がこの様な状態で、事故が起きたとしたら、どうなるだろうか。おそらく、観光地の管理責任者は、新聞やテレビで轟々たる批判を浴びるだろう。観光客が来るのに、なぜ柵をつくらなかったか、なぜ管理人を置かないのか、なぜ立札を立てないのかー。だから日本の公園管理当局は、前もって、ありとあらゆる事故防止策を講ずる。いってみれば、行動規制である。観光客は、その規制に従ってさえいれば安全だというわけである。
大の大人が、レジャーという最も私的で自由な行動についてさえ、当局に安全を守ってもらい、それを当然視している。これに対して、アメリカでは、自分の安全は自分の責任で守っているわけである。
この状況は、事故防止の話だけではない。社会全体についていえる。
たとえば、・・・
米国アリゾナ州北部に有名なグランド・キャニオンがある。コロラド川がコロラド高原を刻んで作った大渓谷で、深さは1,200mである。日本で最も高いビル、横浜のランドマークタワーは、70階、296mだから、その4つ分の高さに相当する。
ある日、私は現地へ行ってみた、そして、驚いた。
国立公園の観光地で、多く人々が訪れるにもかかわらず、転落を防ぐ柵が見当たらないのである。しかも、大きく突き出た岩の先端には若い男女がすわり、戯れている。私はあたりを見回してみた。注意をうながす人が居ないばかりか、立札すら見当たらない。日本だったら柵が施され、「立入厳禁」などの立札があちこちに立てられているはずであり、公園の管理者がとんできて注意するだろう。
私は想像してみた。
もし日本の観光地がこの様な状態で、事故が起きたとしたら、どうなるだろうか。おそらく、観光地の管理責任者は、新聞やテレビで轟々たる批判を浴びるだろう。観光客が来るのに、なぜ柵をつくらなかったか、なぜ管理人を置かないのか、なぜ立札を立てないのかー。だから日本の公園管理当局は、前もって、ありとあらゆる事故防止策を講ずる。いってみれば、行動規制である。観光客は、その規制に従ってさえいれば安全だというわけである。
大の大人が、レジャーという最も私的で自由な行動についてさえ、当局に安全を守ってもらい、それを当然視している。これに対して、アメリカでは、自分の安全は自分の責任で守っているわけである。
この状況は、事故防止の話だけではない。社会全体についていえる。
たとえば、・・・